秩父夜祭の名所「団子坂」からすぐ。行列マストのここだけの味

冬の風物詩・秩父夜祭がクライマックスを迎えると、いくつもの笠鉾と山車が秩父市役所すぐの団子坂を曳きあげられます。その団子坂からほど近くにある「珍達そば」は、三代目夫婦で店を切り盛りする人気店です。

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元はもっと赤かったであろうピンク色のテーブルとイス、表面が所々剥げたカウンターなど、長い月日の経過を感じさせてくれるレトロな店内。奥には座敷席が2間あり、思っていた以上に明るく広い空間です。

客の8割が注文。県内産ネギどっさりの熱々ラーメン

ラーメンは全部で5種類ありますが、昔も今もお客さまの8割が注文するという「珍達そば」(750円)をオーダーしました。3分ほどで運ばれてきたその姿は思わず二度見してしまうインパクト。入口にあった「ここでしか食べられないラーメンです」の謳い文句に偽りなしです。

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ネギの甘味と豚バラの旨味がバランスよく混ざり合った醤油スープに、しっとりと絡みつく細麺。もうもうと上がる湯気を顔に浴びつつ、ひと口、またひと口と箸が止まらなくなります。

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スープは豚のゲンコツと煮干し、昆布などを煮込んだあっさり味。注文が入ると、まずはネギと豚バラをゴマ油で炒めます。そこにチャーシューの漬け汁(カエシ)とスープを注いだら茹であがった麺を入れ、ひと煮立ちさせて完成。地元の飲食店に発注している特注麺は、熱々スープと合わせることを考慮して、茹で時間わずか5秒です。

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2番人気という「みそ珍達そば」(750円)は、見た目はほぼ同じですが、生姜の効いた味噌スープがこれまた美味! 卓上に置かれたニンニク唐辛子や自家製ラー油をちょっとずつ入れ、味変しながら食べる常連客が多いとか。

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大好きなじいちゃんの店で働く。18歳でこの世界へ

年季の入った厨房に立つのは三代目店主の小崎雅也さん。オーダーや配膳を担当する妻の沙代さんと2人で店をまわしています。店の創業が1953年"頃"だという理由は、雅也さんの言葉をそのまま借りれば「近くの酒屋さんが言うには『昭和28年(1953年)くらいから営業してたんじゃねえかな』って。じいちゃんに詳しく聞いたこともないし......なので、その頃に創業したということにしています(笑)」。

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評判の店として賑わっていた「珍達そば」の前店主は雅也さんの祖父・北堀盛夫さん。盛夫さんにとって雅也さんは目に入れても痛くないほどかわいい初孫だったそうで、雅也さんも小さな頃から大好きなおじいちゃんの店で遊んでいました。

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1999年、雅也さんは高校卒業とともに店に入りました。「安易な道を選んだと言われればその通りですが、じいちゃんには厳しく鍛えられましたね(笑)」。
かわいい孫とはいえ大切な店を継ぐ跡取りです。スープの仕込み方やラーメンの作り方といった技術的なことはすべて「見て覚えろ」と言うだけ。厨房の片隅から盛夫さんの手元を見て技やレシピを盗むしかありませんでした。

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正式に代替わりしたのは雅也さんが26歳の時です。「じいちゃんにお客さまが付いてたってことですよ、俺になったとたんに客足がめっきり減ってしまって。あれには参りましたね」。長年通っていた常連客は、盛夫さんの友人のようなもの。雅也さんが店を継いで3年ほど、店の売り上げはみるみる下がっていきます。

じいちゃんの味をそのままに、具材と盛りにこだわりを

人気を挽回するために、「じいちゃんが守ってきた珍達そばの良い部分を残しながら、自分なりにもっとおいしくしていこう」。そう思った雅也さんは、一からラーメン作りを見つめ直しました。スープに浮かべる大量のネギは県内産にこだわり、冬場は本庄市産を、夏場は深谷市産の深谷ねぎを使うように。豚バラ肉は旨味の強く出る国産に切り替え、より印象深い味わいにしました。

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食材をブラッシュアップすると同時に、一杯に使うネギの量を増やしてインパクトとお得感をアップ。味噌味の珍達そばやみそらーめん、黒豚餃子などのメニューも増やして集客アップを図り、店の売り上げは持ち直していきました。

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店を継承して気づかされた飲食店経営の本当の厳しさ。でもそれは、一生この商売でやっていこうと腹をくくった時でもあったと振り返る雅也さん。「高校を出たばかりで生意気だった俺を厳しく仕込んだのは、じいちゃんなりの愛情だったと感じます。そりゃあ感謝してますよ」。祖父から孫へと受け継がれた"秩父の味"は、間もなく創業70年くらい。ここにしかない味を求め、明日も店の前に行列ができることでしょう。

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