大正~昭和の歴史とロマンが感じられる場所
店名の「空&閑」とは、併設するお休み処「空」と茶館(カフェ)の「閑」を総称したものだ。もともとこの場所には、大正~昭和にかけて街の繁栄を支えたという大月旅館があった。茶館「閑」がある建物は「旧大月旅館別館」として国指定有形文化財に登録されている。 そんな歴史ある建造物を旅館の娘であるオーナーが受け継ぎ、「またここに人が集まる場所を作りたい」という思いからリノベーションに踏み切った。真新しさはありつつも、ところどころに当時の面影を感じる家財がインテリアとして残されている。
「My space, My time, My pleasure」をテーマにしたくつろぎの空間
玄関で靴を脱いで階段をのぼると、2階がカフェスペースになっている。開放的なワンフロアに16席あり、半個室のような座敷や1人掛け、2~3人が並んで座ることの出来るソファ、大きめのローテーブルなど席の種類はさまざまで、インテリアのテイストもスペースごとにそれぞれ違っている。
取材時はオーナーが不在だったため、店長とスタッフの方々に、お店のコンセプトついて話を聞くことができた。
「My space, My time, My pleasure(私の場所、私の時間、私の喜び)というテーマがあるんです。オーナーの『自分だけの時間と空間を楽しんでもらいたい』という思いが込められています」。周りを気にせず、自分だけのゆったりとしたひとときが味わえるように、わざと席を並べずに点在させ、統一感を持たせていないのだそう。また、こういった飲食店には珍しくBGMが掛かっていない。それも日々の喧騒から離れられるように、というオーナーのこだわりだそうだ。
心と身体にやさしい食事が日々の疲れを癒す
「空&閑」では、可能なかぎり素材にこだわったという和食を楽しむことができる。使われている野菜や魚はその季節にとれた旬のもので、調味料も有機味噌や国産大豆の本造り醤油、ヒマラヤ岩塩など、製法や産地に至るまで細かく選び抜かれている。
和食膳「望月」(1540円)は、大月旅館の「大月」を「満月=望月」に見立てた丸いおにぎりが特徴のお膳。余計な味付けは一切なく、食材の自然な旨みが感じられる。
お茶の種類も豊富で、紅茶はフランスの老舗紅茶専門店「マリアージュフレール」のフレーバーティーを取り扱っている。この紅茶を飲むためだけに訪れる人もいるほど、紅茶通のあいだでは人気の銘柄だ。ほかにもアフリカ産のウガンダコーヒー、中国茶などが多種多様に取りそろえられていて、興味をそそられるものが多く何度も通いたくなる。
また、料理や飲み物には、すべて岩手県釜石鉱山の地底600mに湧き出ている天然の磁性水が使われている。熱処理など人の手が一切加わっていない、岩盤を通って長い年月をかけて自然にろ過されたという天然水は、飲む人の体調を整えてくれるそうだ。
ノスタルジックな気分に浸れる自分だけの特等席
昭和初期の建造物が数多く並ぶ番場通りは、町並み自体がレトロな雰囲気で観光客にも人気のスポットだ。その中間あたりに位置する「空&閑」は、ノスタルジックな気分に浸るにはちょうどいい。茶館の窓からは近隣の町並みを眺めることができ、夏祭りの日には山車が通る様子を頭上から楽しめるという。座り心地の良い椅子で、ゆったりとお茶を飲みながら昭和の純文学を読み耽る、そんな時間の使い方はいかがだろうか。
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