観光客でにぎわう商店街で人気の煮干しラーメン店

ひっそりと佇む「中華SOBA にぼ乃詩」は、2018年に創業した煮干しラーメン店です。モノトーンの外観はうっかりすると見過ごしてしまいそうなほどシンプルですが、「無化調煮干しラーメン」と書かれた赤いサインボードが目を引きます。

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引き戸を開けて中へ入ると、店主の栗田信夫さんが「いらっしゃいませ」と出迎えてくれました。厨房と対面するカウンター6席の小ぢんまりとした店内。厨房側の赤い壁が、この店が元イタリアンレストランということを物語っています。

煮干しのポテンシャルを引き出す3段仕込みスープ

公式SNSのプロフィールで「煮干しに拘(こだわ)り万人受けしない店」と謳う栗田さん。まずは看板メニューの「純煮干し 並み」(950円)をいただき、そのこだわりを伺いました。
手際よく盛り付けが終わり、カウンターに供された純煮干し。チャーシューと刻みタマネギ、大判の海苔という端正なルックスです。スープを口に含むと鮮烈な煮干しの味わいが駆け抜け、旨味がしっとりと舌を包み込みます。

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スープに使う素材は水と煮干しのみ。「このスープは3種類の煮干しを入れ替えながら3段階仕込みで作っています」と栗田さん。煮干しの種類によって火の入れ方やダシの出方が異なるため、ひとつ目の煮干しを煮込んで取り出して、また別の煮干しを煮込んで取り出して、最後に再び別の煮干しを入れて煮込みます。「2回目まででしっかりと旨味を抽出して、3回目はスープ全体に煮干しの強烈な香りを乗せていきます」。

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こうして完成するスープは濃厚な旨味をたたえていて、エグ味もなくさらりとした飲み口です。「大量の煮干しから塩味が出るので、合わせる醤油ダレはほんの5ccなんです」。

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純煮干しに華を添えるトッピングにも注目です。大ぶりのチャーシューは豚の肩ロースで作る煮豚。厚めにカットされていて、肉質の詰まったムッチリとした食感はクセになります。歯切れのよい低加水のストレート麺、刻みタマネギのシャキシャキ感と、いろいろな食感が楽しめる一杯でした。

数々の飲食店を経営し、たどり着いたラーメンの世界

埼玉で生まれた栗田さんは、美容師やパーソナル・トレーナーを経験したあと、20代半ばからはアメリカで古着の買い付けなどをしていました。「帰国してしばらくは原宿で古着屋さんをやったりしていました。その頃、よく先輩経営者に食事に連れて行ってもらう機会があったんです。おいしい食事を口にするうちに『飲食もやってみたいな』って」。子どもの頃から料理好きだったこともあり、西麻布のイタリアンダイニングで本格的に調理技術や食材について学びます。

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念願だった飲食店経営をスタートさせたのが30代に入ってから。川越市や鶴ヶ島市にダイニングバーや居酒屋を次々に開き、調理師としてのキャリアを着実に積み重ねていきました。ここまでの経歴にはラーメンが出てきませんが、栗田さんが若い頃から通っていたというのが日高市「中華そば専門 とんちぼ」。「ラーメン好きといっても、あちこち食べ歩くんじゃなくて決まった店をリピートする感じです。『とんちぼ』さんは鶴ヶ島にあった時代から通ってます」。

「いろいろな店を経営してきましたが、振り返ると『このジャンルは極めた!』って思えなくて。40歳にもなるし、そろそろ自分で納得のいく店をやろうと思いました」。一切の妥協はしないと心に決め、知り合いから紹介された小さなテナントを借りて「にぼ乃詩」を開業します。

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3回に分けてスープを取るのは「自分が心からおいしいと思える味に出合いたいから」と栗田さんは語ります。煮干しの仕入れ先は店の向かいにある老舗乾物店「武州川越 轟屋」。意見をもらいながら店で使う煮干しをセレクトし、納得のいく味、並み居る競合店にも負けない味を求め、手間暇かけて煮干しスープを仕込んでいます。

自分を信じて、愚直にラーメンの味を高めていきたい

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続いて、純煮干しと人気を二分するという「あえソバ」(250円)と、アレンジ系の「エビ辛ラー油のあえソバ」(300円)も実食。丼の底にある醤油ダレと具材をよく麺に馴染ませていただきます。「ラーメンを召し上がって、もうちょっと食べたいなって方におすすめです。残ったスープでつけ麺みたいにする方もいらっしゃいますよ」。煮干しスープと麺の調和を楽しむ純煮干しに対し、こちらは麺のおいしさをダイレクトに味わう一品。エビ辛ラー油にはレモングラスなども効いていて、そこそこ辛いのに後味はさっぱり。卓上の煮干し酢で味変させながらあっという間に完食です。

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異業種から飲食業界に転身し、40歳からの挑戦として始めたラーメン店経営。仕込みから調理、接客まですべてワンオペでこなすというハードな生活を送りながらも、お客さまへの感謝の気持ちでいっぱいだそう。
「僕は自分が作りたい味でやっていますから、正直いうと口に合わない方もいると思います。競合も多いなか、この狭い店にわざわざ足を運んでくださる皆さまには感謝しかないですね」。もうすぐ開業から丸6年を迎える「にぼ乃詩」。スープ作りに対する栗田さんの探求心は、どんどん増すばかりです。

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